公開日:2026年10月30日(初版) 公開者:三流プラントエンジ(「物理を理解するための数学」編集委員会)
公開場所:https://3ryu-eng.com/disclosure/ (初版の公開時は https://rocky0330pe.github.io/homepage/disclosure/ 。旧アドレスは新アドレスへ転送されます) ソースコード:https://github.com/Rocky0330pe/homepage (変更履歴に日付が記録されています)

0. この文書の目的と扱い

  • 以下に記載する仕組み(実装済みのもの・未実装の派生案を含む)は、本公開日をもって公知の技術とします。
  • 公開者はこれらについて特許を出願しません。だれでも自由に実施できます。ソースコードは Apache License 2.0 で公開しており、同ライセンスの特許条項も適用されます(教科書の本文・PDF・TeX ソースは別の利用規約によります)。
  • 各項目は、その一部だけを取り出して組み合わせた形も含めて開示します。「〜してもよい」「〜の代わりに〜でもよい」と書いた変形は、いずれもこの開示の範囲に含まれます。

1. 目的:読者の声で改訂を続け、「だれにでもわかる教科書」に近づく

従来の教科書・専門書は、改訂が数年に一度で、読者がどこでつまずいたかを編集側が細かく知る手段もほとんどありませんでした。本システムは次の循環を短い周期(例:月1回)で回し続けます。

  1. 教科書を無料で公開し、専用のビューアで読めるようにする。
  2. 読者は、わかりにくい部分をスクリーンショットで囲み、意見を送る、またはその部分について AI に質問する。
  3. 意見・質問とその回答・回答への評価・ページごとの手応えをデータベースに蓄積する。
  4. 生成AIが、蓄積された声と教科書のソース(TeX など)を読み、改訂案(判断の一覧・ソースの差分・図の修正指示)を作る。
  5. 人が改訂案を確認して反映し、新しい版として公開する。反映した声には「反映済み」と版を記録し、読者に知らせる。
  6. 新しい版に対して再び声が集まり、わかりやすさの指標(「むずかしい」の比率、AI の回答で解決しなかった質問の数など)が版ごとに下がっていくことを確かめる。

これを繰り返すことで、従来の改訂の周期よりはるかに速く見直しが進み、最終的にだれが読んでもわかる教科書に収束させることを目指します。

2. 全体の構成(実装済み)

構成要素 内容
配布 教科書の PDF・組版用 TeX 一式・検算プログラムを、利用規約への同意のうえで無償配布する。最新版(latest)と過去の版(archive/版)を分けて保管し、ビューアは版ごとに声を区別する。
ビューア ブラウザで動く PDF ビューア(PDF.js)。ページ全体・幅合わせ・拡大縮小、画面の縦横比による1ページ/見開きの自動切り替え(表紙1ページ → 2・3 → … → 裏表紙1ページ)、しおり(目次)からのジャンプ、スワイプ・横スクロール・画面端のタップによるページ送り。
位置の自動記録 読者が範囲を囲むと、教科書の ID・版・PDF のページ番号・印刷上のページ番号(ノンブル、PDF のページラベル)・部と章(PDF のしおりの階層からページ位置で判定)・範囲(ページに対する割合 x, y, w, h)・範囲内の文字(PDF のテキスト層から、文字の中心が範囲内にあるものを抽出)・範囲の画像を自動で記録する。
意見の送信 種類(図・表がわかりにくい/説明がわかりにくい/改善案/まちがい/その他)・内容・改善案・読者の区分(小学生〜社会人・保護者・先生)を、上記の位置情報と画像とともに送る。画像には送信前にペンで印を書き込める。
AI への質問 囲んだ部分の画像・範囲内の文字・そのページ全体の文字・部と章・読者の区分を手がかりとして生成AIに渡し、教科書と同じ用語・記号で、読者の区分に合わせて答えさせる。続けて質問でき、やり取り全体を保存する。各回答に「わかった/まだわからない」の評価を付けられ、「まだわからない」は、そのまま教科書への意見として送れる。
ページの手応え 各ページに「わかった/むずかしい」のボタンを置き、ページごとに集計する。
みんなの付せん ほかの読者が意見・質問した範囲を、文章を伏せたまま位置だけ、ページ上に半透明の枠で重ねて表示する。しおりには章ごとの声の件数(意見+質問+むずかしい)を色の濃さで表示し、難所の地図にする。
対応状況の通知 読者の端末に送った意見の受付番号を保存し、対応状況(未対応・改訂を検討中・反映済み(版)・見送り)を照会できる。反映されたときは、次にビューアを開いたときに知らせる。
改訂のお知らせ 読者の声で改訂したページを開くと、改訂した版と内容を表示する。
通信できないとき 送れなかった意見・手応えを端末に保存し、次に開いたときに自動で送り直す。
データベース 意見・手応えは「書き込みのみ」許可し、読者の文章や画像は公開しない。サイトからは、集計(ページごとの件数)・範囲の位置・受付番号による状況照会だけを読める。
定期的な改訂案の作成 月1回、未対応の意見・AI とのやり取り(評価付き)・ページの手応えを集め、章ごとにまとめる。章を特定できたものは、その章の TeX ソースを組版用一式から取り出して生成AIに渡し、意見ごとの判断の一覧・TeX の差分(unified diff)・図の修正指示・直さないものとその理由を作らせる。改訂案は読者の声を含むので非公開の場所に保存し、件数だけを管理者に通知する。使った声は「改訂を検討中」にする。
人による確認と公開 管理者が改訂案を確認して TeX に反映し、組版して新しい版を公開する。反映した声を「反映済み」にし、版を記録する。

3. 派生案(未実装のものを含む)

以下は、上記の構成の変形・拡張として開示するものです。

3.1 範囲の選び方・記録のしかた

  1. 長方形のほか、自由な形(投げ縄)・複数の範囲・文字列の選択(テキスト層の選択)・数式や図の自動検出による選択で範囲を指定する。
  2. 範囲の位置を、PDF の座標・ページに対する割合・テキスト層の文字の位置(文字番号)・TeX ソースの行番号(SyncTeX などの対応表による)・段落や図の ID のいずれか、または複数で記録する。
  3. 組版時に段落・図・式ごとに一意の ID を埋め込み(PDF の構造タグ・注釈・目に見えない文字など)、範囲から ID を直接求めて、ソースの該当箇所を確実に特定する。
  4. 版が変わっても声の位置を追えるよう、範囲内の文字・前後の文字・図の画像特徴で新しい版の位置を探し直し、声を新しい版に引き継ぐ。
  5. PDF のほか、EPUB・HTML・画像・動画(時刻と画面上の範囲)・音声(時刻)・紙の教科書(各ページに印刷した二次元コードから、そのページをビューアで開いて範囲を選ぶ、またはスマートフォンのカメラで紙面を撮影して範囲を選ぶ)を対象にする。
  6. 読者の視線・滞在時間・ページの行き来・拡大した場所・何度も読み返した場所を(本人の同意のもとで)記録し、明示的な声がなくても難所を推定する。

3.2 読者の声の種類

  1. 意見の種類を増やす:難しすぎる/やさしすぎる/前提の知識が足りない/例がほしい/図がほしい/計算の途中を詳しく/言葉の意味がわからない/翻訳の誤り など。
  2. 音声・手書き・写真(自分のノートや解答)で声を送る。手書きの数式は文字認識して記録する。
  3. 読者が自分なりの書き直し案を、TeX・Markdown・手書きの図で提出する。
  4. 同じ場所への声に「同じ意見」「賛成」を付けられるようにし、声の重みを数える。
  5. 読者の区分(学年・職業・既に読んだ巻)・その人の理解度(確認問題の正答率)を声に付け、どの読者層にとって難しいかを分析する。
  6. 理解度の確認問題をページや章の終わりに置き、正答率を「わかりやすさ」の指標として集める。

3.3 AI への質問

  1. AI が答えるときに、教科書全体(ほかの章・用語集・さくいん)を検索して、前提となる章を案内する。
  2. AI の回答に、教科書の該当ページへのリンク・図の再掲・新しく描いた図(グラフ・図解の自動生成)を付ける。
  3. 同じ場所への質問とよい回答(「わかった」の多い回答)を蓄積し、次の読者には先に「よくある質問」として示す。その回答を改訂案の材料にし、本文に取り込む。
  4. AI が、読者の区分に合わせて同じ内容を複数の難しさで説明し、どれで理解できたかを記録して、本文の書き方の選択に使う。
  5. AI の回答で解決しなかった質問(「まだわからない」)を最優先の改訂対象にする。
  6. 回答を作る AI と、回答が教科書の内容と矛盾しないかを確かめる AI を分け、誤った回答を防ぐ。
  7. 費用を抑えるため、質問の数の上限・同じ接続元からの回数の上限・難しさに応じたモデルの使い分けを行う。

3.4 改訂案の作り方

  1. 声を、場所(章・段落・図)と内容の近さでまとめ(クラスタリング)、まとまりごとに改訂案を作る。
  2. 優先度を、声の数・「むずかしい」の比率・解決しなかった質問の数・読者層の広さ・前回の改訂からの期間で決める。
  3. 改訂案を複数作り、別の AI(または読者の一部)に評価させて、よいものを選ぶ。
  4. 改訂案を、元の書き方のきまり(用語・漢字・ルビ・記号・部品・見出しの型)に照らして自動で検査する。
  5. 差分を自動で TeX に当てて組版し、エラー・はみ出し・ページ数の変化・相互参照の切れを自動で検査する(ページが増える場合は、ほかのページで調整する案も作る)。
  6. 図の改訂は、図のソース(TikZ・Python 等)を AI が直して再生成する。
  7. まちがいの指摘は、計算や証明を AI と検算プログラムで確かめてから直す。
  8. 改訂の結果を、まとめて1つの新しい版にするほか、ページ単位で随時更新する(版をページごとに持つ)。
  9. 人の確認を省き、一定の条件(声の数・自動検査の合格・リスクの低い種類の修正)を満たすものは自動で公開する段階的な自動化。

3.5 効果の確かめ方

  1. 改訂の前後で、同じ場所の「むずかしい」の比率・質問の数・解決しなかった質問の数・確認問題の正答率を比べ、版ごとに「わかりやすさの指標」を記録する。
  2. 改訂した文章と元の文章を、読者を2つに分けて見せ(A/B テスト)、どちらがわかりやすいかを比べてから採用する。
  3. 指標が下がらなかった改訂は元に戻す、または別の改訂案を試す。
  4. 全ページの指標の推移を公開し、教科書が「だれにでもわかる」状態に近づいていることを示す。

3.6 読者への還元

  1. 声を送った読者に、反映された版と改訂の内容を知らせる(ビューア上の通知・メール・RSS)。
  2. 改訂したページに印を付け、改訂の履歴(どの声で、どう直したか)を読者が見られるようにする。
  3. 声を送った読者を(本人が望めば)協力者として教科書に記す。
  4. 読者ごとに、つまずいた場所をもとに復習すべき章を案内する。

3.7 複数の版・言語・形式への展開

  1. 同じ教科書から、読者層(小学生向け・大人向けなど)ごとに異なる版を、声をもとに生成AIで作り分ける。
  2. 翻訳版にも同じ仕組みを使い、各言語の読者の声を元の言語の版の改訂にも生かす。
  3. 学校・塾・企業の研修などで使う場合に、クラス単位の声の集計を先生に示す(学習管理システムとの連携)。
  4. ほかの教科書・専門書・取扱説明書・社内文書・法令の解説・論文などに同じ仕組みを使う。

3.8 プライバシーと悪用の防止

  1. 読者の文章・画像は非公開とし、公開するのは集計と位置だけにする。接続元は、そのまま保存せず一方向の変換(ハッシュ)にして回数制限にだけ使う。
  2. 送信前に個人情報(氏名・連絡先・顔など)を自動で検出して伏せる。
  3. いたずら・宣伝・攻撃的な内容を AI で判定して除く。人間かどうかの確認(CAPTCHA 等)を加える。
  4. 改訂案には読者の声が含まれるので、公開の場所(公開リポジトリ等)に置かない。

Title: A system for continuously revising textbooks from reader feedback captured as page-region screenshots, with AI question answering and periodic generative-AI revision.

Published: 2026-10-30 at https://rocky0330pe.github.io/homepage/disclosure/ , now at https://3ryu-eng.com/disclosure/ (source code: https://github.com/Rocky0330pe/homepage). The publisher dedicates the described methods to the public and will not seek patents on them.

Summary: Textbooks are distributed free of charge and read in a browser-based PDF viewer. A reader selects a region of a page (rectangle, lasso, text selection, or whole page). The viewer automatically records the book ID, edition/version, PDF page index, printed page label, part/chapter (derived from the PDF outline by page position), the normalized region coordinates, the text inside the region (from the PDF text layer), the full page text, and a cropped image of the region, optionally annotated by the reader with a pen. The reader then either (a) submits feedback with a category (unclear figure, unclear explanation, suggested rewrite, error, other), free text, suggested wording, and reader level; or (b) asks a generative AI about the region, the AI receiving the image and text context and answering at the reader’s level using the textbook’s notation, with multi-turn follow-ups and a per-answer “understood / still unclear” rating; unresolved questions can be converted into feedback in one step. Readers can also mark each page as “clear” or “hard”. All signals are stored in a database that accepts anonymous inserts but exposes only aggregates (per-page counts), region positions without text (shown to other readers as translucent “sticky notes” and as a per-chapter difficulty heat map in the table of contents), and status lookups by receipt ID (so readers are notified when their feedback is incorporated into a new edition). Failed submissions are queued on the device and retried. Periodically (e.g., monthly) a job collects unprocessed feedback, Q&A threads with ratings, and page signals; groups them by chapter; extracts the corresponding chapter source (e.g., LaTeX) from the typesetting bundle; and asks a generative AI to produce a per-item decision table, unified diffs of the source, figure-revision instructions, and items not adopted with reasons. Proposals are stored privately; a human reviews, applies, typesets and publishes a new edition, and marks feedback as resolved with the edition. Variants disclosed include: semantic anchors (paragraph/figure IDs, SyncTeX) linking regions to source; re-locating feedback across editions by text and image similarity; QR codes on printed pages and camera capture of paper pages; implicit signals (dwell time, re-reading, gaze); voting and clustering of feedback; prioritization by unresolved questions and reader level; multiple candidate revisions evaluated by AI or by A/B tests with readers; automatic application, typesetting and regression checks (overfull boxes, page count, cross-references); regeneration of figures from their sources; edition-level and page-level “understandability” metrics tracked across editions; reader-level variants and translations generated from the same feedback loop; LMS integration for class-level aggregates; PII redaction and AI-based spam filtering; and application to any document type (textbooks, technical books, manuals, internal documents, legal commentary, papers).

5. 改訂履歴

  • 2026年10月30日:初版を公開。